温泉のトリビア
温泉にはたくさんの成分が溶けていますが、その量を実感するために、市販の入浴剤で温泉に匹敵する溶存性分量を作るにはどれくらい必要かシュミレートしてみましょう。
某社の「温泉のもと」を例とし、その成分をみると、内容量は1袋約30gで、そのうち硫酸ナトリウム(NaSO4)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の、溶解する成分は概ね20g程度です。残りは濁り観を付けるために沈降性炭酸カルシウム(CaCO3)や香料などで、これらはほとんど解けないので、この勘定に入れないことにします。
さて、一般家庭の浴槽を300ℓとし、そこに入浴剤を1袋投入した場合、湯1ℓに何gの成分が溶けているのかというと、
20g÷300L=20000mg÷300L
=66.66mg/L
となります。これは食塩泉と比較してみると、食塩泉はその成分が1000mg/L異常ですから、まったく及びもつかず、ごく薄い単純泉にすぎないということになるのです。
では食塩泉の最低限の濃度にするには入浴剤が何袋いるのかというと、
1000mg÷66.66mg=15袋 となります。
実際の食塩泉の溶存成分量は最も多く、例えば草津温泉で早く4000mg/Lですから入浴剤60袋、濃い温泉として有名な有馬温泉では60000mg/Lですから900袋も投入しなくてはなりません。温泉がいかに大量の成分を溶かし込んでいるのかと考えると驚いてしまいますね。
分析結果
私たちは、鉄イオン、塩化物イオン、ホウ酸、硫酸イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンについての定量をおこないました。結果は次のとおりです。
|
A |
B |
C |
D |
E |
F |
Fe2+(mg/L) |
2.082 |
0.294 |
0.467 |
0.466 |
0.029 |
0.226 |
Cl-(mg/L) |
2.69 |
301.89 |
485.9 |
800.7 |
499.136 |
194.17 |
HBO2(mg/L) |
6.79 |
30.68 |
35.5 |
57.86 |
37.26 |
26.3 |
SO42-(mg/L) |
41.2 |
185.2 |
24.7 |
69.6 |
49.4 |
38.0
|
Mg2+(mg/L) |
2.9 |
5.8 |
26.4 |
11.1 |
8.7 |
11.1 |
Ca2+(mg/L) |
10.4 |
80.8 |
110.8 |
195.0
|
168.1 |
40.4 |
Na+(mg/L) |
6.1 |
295.5 |
268.8 |
418.6 |
304.9 |
258.9 |
K+(mg/L) |
3.2 |
32.2 |
44.8 |
56.7 |
36.6 |
42.2 |
中央温泉研究所の分析結果
|
A |
B |
C |
D |
E |
F |
Fe2+(mg/L) |
16.0
|
|
0.6 |
1.3 |
1.2 |
2.6 |
Cl-(mg/L) |
3.0
|
|
553.9 |
810.3 |
465.7 |
200.1 |
HBO2(mg/L) |
37.2 |
|
52.1 |
63.0
|
37.8 |
35.6 |
SO42-(mg/L) |
1077 |
|
40.3 |
83.1 |
107.0
|
86.4 |
Mg2+(mg/L) |
5.2 |
|
29.8 |
6.3 |
12.2 |
5.1 |
Ca2+(mg/L) |
125.7 |
|
119.1 |
145.9 |
102.0
|
44.9 |
Na+(mg/L) |
29.7 |
|
327.0
|
536.9 |
342.6 |
5.1 |
K+(mg/L) |
9.1 |
|
30.2 |
29.3 |
19.7 |
24.9 |
〈考察〉
研究所の分析結果は、Aの場所は硫酸イオン、Cのイオンはナトリウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオンの値、割合も高く、それぞれの泉質の特徴が出ていることがわかる。しかし、私たち研究会の結果は研究所の値と比較するとイオンの値によって大きな差がある。この原因として、私たちの技術が未熟であったこと、温泉水を採取してから時間がたってしまったこと、ペットボトルで採取したためペットボトルの成分が溶け何らかの影響を与えたものと考えられる。