【生化学:脂肪の代謝】

脂肪酸のβ酸化反応について
糖から脂肪酸への生合成経路
コレステロールの代謝
血漿リポたんぱく質の種類と機能
飢餓状態のエネルギー代謝(ケトン体の利用)

1. 脂肪酸のβ酸化反応について

吸収された細胞質中の脂肪酸はミトコンドリアマトリックスにてβ酸化を受ける

・脂肪酸の細胞質からミトコンドリアマトリックスへの移行

@[細胞質]脂肪酸→脂肪酸アシルCoA(by脂肪酸活性化酵素

A[ミトコンドリア内膜外側表面]脂肪酸アシルCoA→アシルカルニチン(byアシルCoA:カルニチンアシル転移酵素T

  〜アシルカルニチンは内膜のアシルカルニチン/カルニチン輸送体でマトリックスへ移行〉〜

B[マトリックス]アシルカルニチン→脂肪酸アシルCoA(byアシルCoA:カルニチンアシル転移酵素U

・脂肪酸のβ酸化の過程

@     アシルCoA→Δ2,3−トランス−エノイル−CoA(アシルCoA脱水素酵素、酸化型FAD)

A     Δ2,3−トランス−エノイル−CoA→L−3−ヒドロキシルアシルCoA(エノイルヒドラターゼ、H2O)

B     L−3−ヒドロキシルアシルCoA→3−ケトアシルCoA(L−3−ヒドロキシルアシルCoA脱水素酵素、NAD

C     3−ケトアシルCoA→アセチルCoA+炭素数2個少ないアシルCoA(β−ケトラーゼ、補酵素A)

加チオール分解

     炭素数が奇数の脂肪酸は、最後に炭素数3つのプロピオニルCoAが残るの

@     プロピオニルCoA→D−メチルマロン酸CoA(プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、ビオチン、HCO3、ATP)

A     D−メチルマロン酸CoA→L−メチルマロン酸(メチルマロニルCoAエピメラーゼ

B     L−メチルマロン酸→スクシニルCoA(メチルマロニルCoAムターゼ、VB12)⇒TCA回路へ

・β酸化の収支

アシルCoAからβ酸化1回転

FADH2+(NADH+H)+アセチルCoA=2FADH2+4(NADH+H)+ATP

17ATP

EX)パルミトイルCoA(C16)⇒7(FADH2+(NADH+H)+アセチルCoA)+アセチルCoA

           =15FADH2+25(NADH+H)+8ATP

           =131ATP

2. 糖から脂肪酸への生合成経路

エネルギーが余るとアセチルCoAを材料に細胞質で脂肪酸は合成されている。アセチルCoAはマロニルCoAとなり、これが次々に脱炭酸していき縮合、炭素を2個ずつ伸張して脂肪酸が合成される。脂肪酸合成には、脂肪酸合成酵素複合体(補酵素ホスホパンテテイン:パントテン酸を含む、マロニルCoAが結合)、還元型NADPが必要である。

細胞質で合成される肪酸脂の炭素鎖はC16くらいのパルミチン酸までで、更なる伸張、不飽和化は小胞体やミトコンドリアでおこなわれる。1分子のパルミチン酸を合成するのに7分子のATPを消費して8分子のアセチルCoAと14分子の還元型NADPが必要である。

@     ミトコンドリア内のアセチルCoAをクエン酸に変えて細胞質へ輸送し、ATPを使ってクエン酸を再び分解して細胞質にアセチルCoAをおくる。

A     アセチルCoA→マロニルCoA(アセチルCoAカルボキシラーゼ、ビオチン、CO、H2O、Mg2+

律速酵素:アセチルCoAカルボキシラーゼ 活性化;クエン酸、フィードバック阻害;長鎖アシルCoA

無益回路の回避:β酸化はマロニルCoAによりカルニチンアシルトランスフェラーゼが阻害され阻害される。これを防ぐため脂肪酸合成は細胞質、β酸化はミトコンドリア内としている。

B     不飽和脂肪酸の生合成 

パルミチン酸→ω−9 オレイン酸 →ω−6 リノール酸 →ω−3 α−リノレン酸

     ω−3 α−リノレン酸→EPA→DHA

     ω−6 リノール酸→γ−リノレン酸→ホモγ−リノレン酸→アラキドン酸

3. コレステロールの代謝

ステロイドホルモンはコレステロールから合成される。

例 ステロイドホルモン)

     鉱質コルチコイド(副腎):無機イオンの腎臓での再吸収

     糖質コルチコイド(副腎):炎症抑制、糖新生の調節

     アンドロゲン(例テストステロン)、エストロゲン(例エストラジオール)、プロジェステロン(:女性生殖サイクル調節)(性腺、胎盤)

コレステロールの分解によって胆汁酸の生合成がはじまる。

1次胆汁酸:コレステロールが分解(シトクロームP-450O、還元型NADP)されて生ずるコール酸。グリシン、タウリンと抱合してグリココール酸、タウロコール酸となり胆汁中に入る。

2次胆汁酸:デオキシコール酸などのように、1次胆汁酸から腸内細菌によってつくられる。

4. 血漿リポたんぱく質の種類と機能

血漿リポたんぱく質は、たんぱく質、遊離コレステロール、コレステロールエステル、リン脂質、トリアシルグリセロールを含有しコレステロール、脂質の運搬に関与する。比重の軽いものからキロミクロン、VLDL、LDL、HDL。

キロミクロン:小腸で吸収されたトリアシルグリセロールを脂肪組織、心臓、骨格筋など脂肪酸を燃焼あるいは貯蔵する組織におくる。リパーゼが各組織の毛細血管中にあり、トリアシルグリセロールを分解して脂肪酸を供給している。

VLDL:肝臓にて余分な脂肪酸や糖質から作られたトリアシルグリセロールを貯蔵能力のある脂肪組織へ運搬する。

LDL:アポB−100というたんぱく質をもち、これを認識するLDLレセプターのある細胞へ豊富に含まれるコレステロールと共に吸収される。VLDLからトリアシルグリセロールが減少したもの。

   末梢組織へコレステロールを運搬し通称悪玉。 

HDL:LCAT(レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ)をもち、コレステロールとレシチンとをエステル化させコレステロールを絡めとり肝臓へと輸送する。末梢組織からコレステロールを運搬し、通称善玉。

5. 飢餓状態のエネルギー代謝(ケトン体の利用)

飢餓状態では脂肪酸のβ酸化によりエネルギーをえているため、TCA回路では処理しきれないほど過剰のアセチルCoAが生成する。過剰供給となったアセチルCoAは肝臓にてアセト酢酸、β−D−ヒドロキシ酪酸、アセトンなどのケトン体へと変換される。可逆的にβ−D−ヒドロキシ酪酸へ変換されるとアセト酢酸は、肝外組織(脳、腎皮質、心筋、骨格筋)にてTCA回路中間体のスクシニルCoAからCoAをうけとりアセトアセチルCoAになる(スクシニルCoAはコハク酸になる)。アセトアセチルCoAは補酵素Aによって、アセチルCoAを生成しTCA回路で酸化される。

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