1)静止電位と活動電位の発生機構
2)興奮伝導の機構
3)シナプス伝達とその調節機構
4)骨格筋の興奮収縮連関
5)心筋の興奮収縮連関
6)平滑筋の興奮収縮連関
7)代表的な神経伝達物質について、名称と作用ならびに受容体の種類・・・ACh、NAについて・・・
8)赤血球の産生とその調節因子
9)ヘモグロビンの分解産物とそれらの代謝
10)好中球とマクロファージの働き
11)血小板の働き
12)血液凝固機構、凝固阻止機構、繊維素溶解機構
13)固有心筋と特殊心筋の活動電位を形成する膜電流
14)心拍数の調節機構
15)毛細血管を横切る各種物質の移動機構
16)血圧の調節機構
17)血管平滑筋に作用する代表的な収縮調節物質とその作用機構
静止電位のマイナスは、K+の電気化学ポテンシャルによって作られる(電位依存性Nach、Cachは閉まっている)。K+の電気化学ポテンシャルがつり合うまで、非電位依存性KchからK+の流出が続き細胞内には−がたまる。また活動電位発生後はNa―KATPaseによりNa+3分子が細胞外へK+2分子が細胞内へ入り結果、細胞内には−がたまる。(マイナスを維持するために細胞内にはpH7でマイナスの蛋白やら燐酸イオンなどを多く含む)
活動電位:受容体にリガンドがつくことにより、Na濃度が低いうえマイナス帯電した細胞内へ向かってNa+の流入が起こる。ある程度の電位となると電位依存性Nach、続いて電位依存性Cachが開き、一気に脱分極が進み刺激電流が閾値に達すると、活動電位が発生する。
伝導では興奮部から末端部へ電流が流れ、その部位を臨界膜電位まで脱分極する必要がある。伝導方法には無髄神経と有髄神経の2種類のケースがある。
無髄神経では、軸索小丘から発生したプラスにより近くのマイナスが中和され脱分極が起こり、近くのNachが開き
Na+が流入する。このプラスが近くのマイナスを中和し脱分極が起こりNachを開きNa+が流入・・・といった感じで興奮は伝導する。
有髄神経では、無髄神経で起こっていたことが、髄鞘と髄鞘の間ランビエ絞輪間で起こる。絞輪から絞輪への興奮は跳躍するように伝導する。(跳躍伝導)
(ちなみに興奮伝導の三原則;両側性伝導、絶縁性伝導、不減衰性伝導)
活動電位がシナプス前末端へ伝導すると、電位依存性Cachが開き、Ca2+の流入により活性帯に集まったシナプス小胞は、シナプス前膜へ開口分泌する。放出された神経伝達物質は、シナプス間隙を通り、シナプス後膜の受容体に結合し興奮は伝達される。
後述の理由により、興奮性シナプス後電位EPSPと抑制性シナプス後電位IPSPが発生する。
EPSPは、対岸の神経細胞の脱分極を促し、その反対にIPSPは過分極を促す。
例)感覚神経→運動神経
EPSP;感覚神経からの刺激が大きいほど、終板電位も大きくなりAChも多く放出されて、運動神経の脱分極を促すことになる。
それに対して、介在ニューロンから抑制物質(グリシン、GABA)が、シナプス前末端、シナプス後部にあるCl内蔵七回貫通グリシン受容体、GABA受容体にはまると、Cl−が細胞内へ流入する。もしニューロン前末端で起こると脱分極がCl−のマイナスによって中和され、電位依存性Cachが開かずCa2+の流入が妨げられ、神経伝達物質の分泌が抑制されEPSPが小さくなる(シナプス前抑制)。
またシナプス後部で起こると、細胞内にマイナスが流入し過分極方向へ向かうためIPSPをおこす(シナプス後抑制)。
(脊髄の運動ニューロンでは、レンショウ細胞によって興奮した自らを抑制するネガティブフィードバッグがみられる(反回抑制))
T管膜へ活動電位が伝わるとDHP受容体のL型Cach分子のリピートUとリピートVの間の細胞内ループに構造変化が起こり、SRのリアノジン受容体のN末端にある足を細胞内ループが押す。するとリアノジン受容体が物理的変化を感知し構造変化を起こしSRからCaイオンを放出させる。また流入したCaイオンによっても、リアノジン受容体の構造変化が起こりSRよりCaイオンが放出される(CICR;Ca誘発性Ca放出)。
Ca濃度が一定量(10−7→10−5)になると、放出されたCaイオンが、ミオシンヘッドのCaATPaseを活性化し、ミオシンヘッドのATPは【ADP+Pi;リン酸】となる。またCaはトロポニンCと結合し、トロポニンIのミオシンガードをはずし、ミオシン頭部がアクチンフィラメントと結合する(活性複合体)。ミオシンヘッドから
ADP+Piが外れると収縮が起こり(硬直複合体形成)、ミオシンヘッドへATPが再び結合すると硬直状態(収縮)から弛緩する。 SRへCaイオンが再吸収されると(10−5→10−7)、脱活性化して、弛緩する。
活動電位が伝わると、細胞外からDHP受容体を通ってCaは流入してくる。するとCICRによって細胞内カルシウム濃度は上昇。収縮・弛緩機構は、同じく横紋筋の骨格筋と同様。ただし弛緩の際は流入した分、Caを放出する。
収縮の調節:骨格筋が収縮の加重ができるのに対して心筋は不応期が長く収縮の荷重をしないため、もっぱら細胞内Ca濃度と感受性を変える必要がある。
例)細胞膜受容体にカテコラミンが結合するとG蛋白を介してcAMPを作り、PKA(蛋白リン酸化酵素)を活性化。
するとリン酸化されたCachは広く長く開き、細胞内カルシウム濃度は上昇する。またリン酸化されたCR上ホスホランバンのCa結合能が上昇するとSRには多くのCaがストックされ、結果的に一回の興奮で大量のCaを放出することになる(Ca↑)。
また、ムスカリン受容体に、AChがつくと、Kchが活性化して過分極が起こり収縮力は減少する。
流入したCaと細胞内のカルモジュリンは複合体カルモジュリン・4Caを作り、これがキナーゼと複合体キナーゼ・カルモジュリン・4Caをつくりキナーゼは活性化する。するとミオシン軽鎖リン酸化が起こり、ミオシンヘッドがアクチンフィラメントと結合し収縮が起こる。弛緩はホスファターゼによるミオシン軽鎖の脱リン酸化によって、ミオシンヘッドとアクチンフィラメントとの結合がはずれることによっておこる。
収縮の調節;リガンドが受容体に結合すると、G蛋白を介してPLC活性化が起こりPIP2をIP3とDAGに分解する。
IP3は発達悪いが重要なSRを刺激してCaを放出させる。DAGはPKCを活性化し、蛋白リン酸化によりCachを変形しCaの通りをよくする。結果的に興奮一回あたりの細胞内Ca濃度は上昇し、ミオシンヘッドとアクチンフィラメントの結合が多くなり、収縮力が増大する。
7)代表的な神経伝達物質について、名称と作用ならびに受容体の種類・・・ACh、NAについて・・・
・AChにはニコチン受容体(NM、NN)とムスカリン受容体(M1,M2,M3)がある。
・NAには、α受容体とβ受容体がある。
NM:骨格筋にあり、コリン作動性の運動神経から放出されるAChを受け止め活性化する。
NN:神経節、副腎髄質にあり、コリン作動性の節前繊維から放出されるAChによって活性化する。このとき副腎髄質からアドレナリンが放出される。
M1,M3:AChが受容体につくとG蛋白をへてPLCが活性化してIP3とDAGが発生しCa脳緯度は上昇する。(神経、平滑筋、内皮細胞)
M2:G蛋白によってACが減少してcAMPの減少が起こり、分極へ向かう(Kch↑);細胞静かになる(心臓)
α:血管収縮、平滑筋弛緩
β:血管弛緩、平滑筋弛緩、気管支弛緩、心拍数上昇
赤色骨髄の幹細胞→前期赤芽球前駆細胞→後期赤芽球前駆細胞→塩基好性赤芽球(Hb少)→多染性赤芽球(Hb多)→正染赤芽球(Hb飽和、脱核)→網状赤血球→赤血球
酸素分圧減少で、腎臓からエリスロポエチン放出→幹細胞から赤芽球前駆細胞分化、増殖→→→→→赤血球増加。
Hbは血管内でマクロファージにより、Fe、CO2、ビリベルジン(緑色)【→還元されてビリルビン(黄色)】、グロビンに分解される。
ビリルビンはアルブミンと結合して遊離ビリルビンとなる。遊離ビリルビンは腎臓をとおり排泄されることは無いが、肝臓でグルクロン酸抱合をうけた抱合型ビリルビンは腎臓でこされて、排泄される。
抱合型ビリルビンは胆汁成分として腸へ分泌される。腸では腸内細菌によってウロビリノゲン(無色)→ステルコビリノゲン(黄色)→ステルコビリン(黄色)となり排泄される。(ウロビリノゲンの一部は腸で吸収されて再び胆汁へ:胆汁色素の腸肝循環) (;尿・便の色素は、Hb由来の抱合型ビリルビン由来)
好中球は成熟細胞であり、血中でも細菌・ウイルスなどをやっつけるが、単球は未熟細胞であり、血管から組織に出て成熟しマクロファージとなってはじめて食作用を持つ。マクロファージにはMHCクラスUがあり、抗原提示細胞として働く。
・(異物+抗体)で食作用増進。
・((異物+抗体)+補体)でさらに食作用亢進(:オプソニン作用)。
化学走性;細菌の毒素、組織の破壊産物、炎症部の血液凝固性生物、補体のC5a、ロイコトリエンB4に対して向かっていく。
血小板は凝集して可逆的な血栓である血小板血栓を形成し、小出血を止血する。
((不活性型の血小板(扁平)は、Ca濃度の増大によって、活性型の血小板(球形)となる))
血小板の活性化;
@血管内皮細胞の損傷部でコラーゲン露出
A内皮細胞から放出されるvWFホンビルブラント因子(GPIR受容体)がコラーゲンに結合
B血小板はGPIPをもつので、結果的にコラーゲンに粘着
C血小板活性化(ただし、PAF、ADP、TXA2によっても血小板は活性化する)
=PLC活性化=Ca濃度↑=血小板変形、顆粒内容物の放出、TXA2放出、血小板どうしで粘着、血小板の収縮
血液凝固機構
外因性;
@外因系(血管外組織の膜や損傷した血管からのホスホリピドやリポ蛋白)+第3因子(組織トロンボプラスチンTPL)
により、第7因子が活性化。
A活性化した第7因子+TPL+PL(ホスホリピド)+Caにより、第10因子が活性化。
B活性化した第10因子+PL+Ca+第5因子により、プロトロンビンがトロンビンになる。
Cトロンビンにより、フィブリノーゲンはフィブリンになる。またトロンビンは、第8因子を活性化しフィブリンをより安定なものにする。(活性化した第8因子により、フィブリンでは共有結合が発生、強い結合となる)
→血液凝固
内因性;
@内因系(コラーゲン)+HMWK高分子キニノーゲン+カリクレインにより第12因子活性化。
活性化した第12因子により、プレカリクレインはカリクレインになる。
A活性化した第12因子+HMWKにより、第11因子が活性化。
B活性化した第11因子により、第9因子が活性化。
C活性化した第9因子+第8因子+PL+Caにより、第10因子が活性化。
D活性化した第10因子+PL+Ca+第5因子により、プロトロンビンがトロンビンになる。
Eトロンビンにより、フィブリノーゲンはフィブリンになる。またトロンビンは、第8因子を活性化しフィブリンをより安定なものにする。(活性化した第8因子により、フィブリンでは共有結合が発生しより強い結合となる)
→血液凝固
凝固阻止機構
・
血管内皮細胞は、表面円滑であり凝固因子や血小板は吸着できず。
・
フィブリン糸は、トロンビンを吸着して更なる凝固を抑制。
・
未吸着のトロンビン+アンチトロンビンV→トロンビン不活性化
・
未吸着のトロンビン+アンチトロンビンV+ヘパリン→瞬時に不活性化
・
トロンビン+トロンボモジュリン(by再生された内皮細胞)→・・・→活性化第8因子、第5因子不活性化 →抗凝固作用
繊維素溶解・・時限爆弾プラスミンの活性化・・・
@
フィブリンは、プラスミノゲンを抱え込んでいる。
A
・
ウロキナーゼUK by腎上皮細胞
・
トロンビン by血液凝固
・
カリクレイン by血液凝固
・
ストレプトキナーゼSK byレンサ球菌
・
t―PA組織型アクチベータ by上皮細胞
によってプラスミノゲン活性化して、プラスミンになる。
Bプラスミンにより、フィブリン(血餅)は溶解。
・固有心筋は、Nachが使えるため、活動電位はNaによって発生する。→伝導速度はやい
・特殊心筋のうち、ヒス束・プルキンエ繊維はNachが使えるため、Naにより活動電位を発生。→伝導速度はやい
しかし結節細胞(洞房結節、房室結節)はNachを使えないため、Caにより活動電位を発生。→伝導速度遅い
心拍数は主に、歩調取り電位の勾配によってきまる!
交感神経興奮:歩調取り電位の勾配↑⇒閾に早く達する⇒心拍数↑
副交感神経興奮:歩調取り電位の勾配↓⇒閾に遅く達する⇒心拍数↓
その他の要因
・
T型Cachにより、活動電位が発生する洞房結節では、
交感神経興奮⇒Ca電流↑⇒閾膜電位↓⇒心拍数↑(∵早く活動電位が発生する)
・
副交感神経興奮⇒最大拡張期電位過分極⇒心拍数↓(∵閾値まで時間がかかる)
・
活動電位持続時間↑⇒心拍数↓
水、NaCl、尿素、グルコースはchを通る。
O2、CO2、麻酔ガス、アルコールは、脂肪性なので膜を通過できる。
巨大分子は、chを通れないが内皮細胞の飲作用によって移動する。
血圧下げたい!
血圧↑⇒頚動脈洞、大動脈弓の圧受容器により、副交感神経刺激⇒心拍数↓、収縮力↓⇒血圧↓
血圧上げたい!
・
腎臓、組織⇒レニン⇒アンジオテンシンT⇒アンジオテンシンU⇒血管平滑筋収縮⇒血圧↑
・
組織⇒カリクレイン(血液凝固因子)⇒血管平滑筋収縮⇒血圧↑
・
圧受容器インパルス↓⇒交感神経刺激⇒心拍数↑、収縮力↑⇒心拍出量↑⇒血圧↑
17)血管平滑筋に作用する代表的な収縮調節物質とその作用機構
平滑筋収縮;
【アンジオテンシンU、エンドセリン、TXA2、アドレナリン、ノルアドレナリン、バゾプレッシン、セロトニン】
⇒血管平滑筋へ作用(IP3をかえして、Ca↑)⇒収縮
平滑筋弛緩;
【NOはcGMP、PGI2とアドレナリンはcAMP】を平滑筋細胞内で製造させる⇒Ca↓⇒弛緩
【アセチルコリン、ブラジキニン、エンドセリン、トロンビン、ヒスタミン】
⇒内皮細胞内でIP3を活性化⇒NOを放出⇒平滑筋細胞内でcGMPを生成⇒Ca↓⇒弛緩