水の細菌学的試験・空中菌の細菌学的試験・器物表面付着微生物の測定
1.
大腸菌群とは何か
大腸菌群とは、グラム陰性菌の無芽胞桿菌で、乳糖を分解して酸とガスを産生する全ての好気性または通性嫌気性菌をいう。
2.
大腸菌群試験が衛生化学的に重要な理由
水中に赤痢、コレラ、チフスなどの有害な菌が含まれているかどうかを一つ一つ調べるのは大変である。大腸菌群は温血動物なので常に水中にいるということは無い。水中にいるということは、屎尿性汚染の可能性が疑える。水の屎尿性汚染は、赤痢、コレラ、チフスなど非常に有害な菌が含まれる可能性へ反映する。大腸菌群を調べることによって、屎尿性汚染の具合がわかり、結果的に赤痢、コレラ、チフスなどの菌が水中に含まれる可能性も判断できるのである。
3.
一般細菌数とは
中温(36℃±1、(24±2h))で標準寒天培地に発生した集落数
4.
一般細菌数試験が衛生化学的に重要な理由
一般細菌数が多いということは、水中に有機物が多いつまり水が汚れているということになる。一般細菌数は、水の清浄度の指標となるのである。
5.
BTB−乳糖ブイヨン培地に炭素原として乳糖が加えられているのはなぜか
本実験で定性・定量した大腸菌群とは乳糖を分解する菌であるので、実験の意義からも今回の炭素原には乳糖を用いた。ブドウ糖を用いたのでは選択性が極めて少ないので本実験には不適である。
6.
この培地にダーラム管を入れた理由
培養した菌が、ガスを産生するかどうかを判断するため。もしダーラム管に気泡が確認できたなら、今回の培地では大腸菌群の存在が確認できる。
7.
大腸菌群試験の結果を記しなさい
検水(mL) |
10 |
1 |
0.1 |
0.01 |
0.001 |
陽性管数 |
0/5 |
0/5 |
0/5 |
0/5 |
0/5 |
8.
大腸菌群試験・定性試験について判定し、その判定理由を述べなさい
検水を10mL加えた培地で、大腸菌群の確認ができなかった(ガス産生が確認できなかった)ので、検水には大腸菌群が含まれていないことが判明した。
9.
MPNを求め、その求め方を説明しなさい
最確数表より
MPN=1.8未満
もし検水に大腸菌群が含まれているのなら、なるべく薄い濃度における陽性管数から最確数表より、培地の検水濃度に留意してMPNを求める。ただし今回の場合は検水に大腸菌群が含まれていなかったため、最確数表よりMPN=1.8未満ということが判明した。
(※検水:一階にある製氷機の氷を溶かした水)
10.
一般細菌数を求めなさい(生データ、計算結果を記すこと)
検水(mL) |
1 |
0.1 |
0.01 |
0.001 |
コロニー数(コ) |
3 |
1 |
1 |
1 |
コロニー数(コ) |
2 |
0 |
2 |
4 |
上図のとおり、検水0.001mLを加えた培地のコロニー数は、検水1mLを加えた培地と同じになってしまっている。これはおかしい。他のデータと見比べても検水0.001mLを加えた培地のデータは、一般細菌数へ反映しないことが適切かと考える。
一般細菌数は培地に検水1mLを加えたものを採用する。
計算結果;(3+2)÷2=2.5 よって一般細菌数は 3コ/mL
11.
この検水が飲料水(プール水、公衆浴場水)として適、不適であるかを判定しなさい
大腸菌群は、検水10mL中5本の試験管すべてで検出されないという、飲料水の衛生化学的基準を満たした。検水中の一般細菌数もまた、3コ/mLであり100コ/mL以下という、飲料水の衛生化学的基準をみたす。以上大腸菌群、一般細菌数にて飲料水の衛生化学的基準をクリアしたので、今回の検水は飲料水として利用できることが確認された。もちろん、プールの水、公衆浴場水としても利用可能である。
12.
空中菌の細菌学的試験(落下細菌)の結果を記しなさい(測定場所、測定日時、測定場所の状況、生データ、計算方法、結果)。また、この結果から、試験場所の清浄度について考察しなさい
測定場所:学生ホール
測定日時:11月8日 3時頃
測定場所の状況:授業中であり、ほとんど人はいなかった。人の出入りも少なかった。
コロニー数(コ) |
0 |
1 |
8 |
計算: (0+1+8)÷3=3
結果: 落下細菌 3コ/5分 (落下法、37℃、48h)
以上の結果から人がいない学生ホールは、室内の基準である落下細菌29コ/5分以下のAランクであり、特に落下細菌10コ/5分以下を満たすので学校の環境としては望まれえる場所である。
13.
器物表面付着微生物の測定(ふきとり試験)の結果を記しなさい(測定場所、測定日時、測定場所の状況、生データ、計算方法、結果)。また、この結果から、試験場所の清浄度について考察しなさい。
測定場所:学生ホールのドアのとって(外側)
測定日時:11月8日4時頃
測定場所の状況:一日を通して多くの人が触れている。
試料液 (mL) |
1 |
0.1 |
コロニー数 (コ) |
18 |
4 |
コロニー数(コ) |
12 |
1 |
計算、結果:データは試料液1mLのものを採用した。ふき取り面積はおおよそ314cm2である。
(18+12)÷2×100=1500コ/314cm2
∴480コ/100cm2
以上の結果より、器物表面付着微生物480コ/100cm2という数字は漠然と多いのではと思って学生ホールのドアノブに嫌悪感をもったが、他の班が調べた食堂のおぼんは490コ/100cm2であったため、それほどドアノブが汚染されていないということが認識できる。 ただし、どんな微生物が付着しているかは不明なので、安直に安心することはできない。
14.
他の班の結果と比較して自分たちの結果を検討しなさい
水の細菌学的試験:
今回検証した一階に設置された製氷機の氷を溶かした水からは、ローソンのおでんの汁、学食の調理用の水と同様に大腸菌群は検出されなかった。検液中の一般細菌数も3コ/mLであり、学食の調理用の水(6.5コ/mL)よりも清浄度は高いことがわかった。何故このような結果が出たかというと、製氷機の氷は実験に使用されるため事前にフィルターにとおすことによって有機物などの汚れが除去されたからである。
空中菌の細菌学的試験:
学生ホールは落下細菌3コ/5分であった、これは学食の返却コーナー(2コ/5分)、駅の改札(2コ/5分)、理工学部の滑走路(6コ/5分)とほぼ同じ値である。これらに共通する特徴は、測定場所の状況として人の往来が少ないという点である。落下細菌の多さは人の往来の多さに比例するのかもしれない。げんに人通りの多いローソン入り口では落下細菌101コ/5分も検出されている。
器物表面付着微生物の測定:
学生ホールのドアのとってからは480コ/100cm2の微生物が検出された。これは電車の吊り革・手すりの190コ/100cm2よりも多い値となった。毎日不特定多数の人々が触るであろう電車の吊り革・手すりの方が学生ホールのドアのとってよりも清潔という結果になった。何故このような結果がでたかというと、あくまでも推測に過ぎないのだが吊り革などは抗菌性のものが選択されていたのかもしれないし、つい最近定期的な電車での殺菌が行われたのかもしれない。または学生ホールのドアのとっては、掃除の対象となっていないのかもしれない。