1.
滅菌法を分類しその滅菌条件、用途を記しなさい
加熱による滅菌 |
条件 |
用途 | ||
火炎法 |
ブンゼンバーナー等の火炎中で数秒以上焼却 |
エーゼ、ピンセット | ||
乾熱法 |
乾燥空気で180~200℃、0.5〜1時間加熱 |
綿線、ペトリ皿、ピペット | ||
湿熱法 |
高圧蒸気滅菌 |
オートクレーブで2気圧121℃、15~20分加熱 |
培地 [芽胞、ウイルスも殺滅] | |
常圧蒸気滅菌 |
コッホ釜で100℃の流通蒸気により0.5~1時間加熱 |
熱に弱い試薬を含む培地 (芽胞は殺滅できない) | ||
煮沸法 |
80~100℃の煮沸水浴中に沈めて、0.5~1時間加熱 |
鋏、メス (芽胞は殺滅できない) | ||
間歇法 |
常圧蒸気滅菌や煮沸滅菌を1日1回、3~5回繰り返し滅菌時以外は20℃に保つ |
熱に弱い試薬を含む培地 | ||
照射による滅菌 |
条件 |
用途 | ||
紫外線法 |
254nm付近の紫外線を照射 |
クリーンベンチ、手術室、食品貯蔵庫 (完全な滅菌は望めない) | ||
放射線法 |
60Co、137Csなどのγ線を照射 |
衛生機材、プラスチック器材、実験動物試料 | ||
高周波法 |
915、2450MHzの高周波を照射し、発生した熱によって滅菌 |
金属製品、水分含量の少ないものには適用できない | ||
ガス法 |
条件 |
用途 | ||
エチレンオキサイド |
炭酸ガスなどで10~30%に希釈しガス滅菌装置で40~60℃、2~12時間滅菌 (エアレーション、湿度が必要) |
医療衛生材料、衣類 [一般細菌、糸状菌、有胞子細菌、ウイルスに対して強力な殺菌力] | ||
ホルムアルデヒド |
|
動物舎、家具 | ||
過酸化水素ガス |
高真空下ガス状の過酸化水素に放電してプラズマ化してラジカルを発生させ、45℃、約75分滅菌 (エアレーション必要なし) |
水分、空気を多く含むもの、高真空に耐えられないもの、セルロースなどには適用できず | ||
二酸化塩素ガス |
2%塩素ガスとNaClで発生させる |
| ||
濾過法 |
条件 |
用途 |
| |
メンブランフィルター |
孔経 無菌濾過:0.45μm以下 細菌の完全除去:0.20~0.22μm ウイルスの除去:0.02μm |
試料溶液 |
|
2.
本実験で行った滅菌法、滅菌した対象を記しなさい
・ 乾熱法:芽胞を含めた一般細菌を器具から滅菌した。
・ 煮沸法:芽胞を除く一般細菌を藁が入った液体培地から滅菌できた。
・ 高圧蒸気滅菌:芽胞やウイルスを含めた一般細菌を藁が入った液体培地から滅菌できた
3.
消毒薬を分類しその条件、用途を記しなさい
アルコール |
条件 |
用途 |
|
エタノール |
80%前後で殺菌力最強 |
手指、皮膚 (芽胞、糸状菌に無効) |
|
イソプロパノール |
50~70%溶液を用いる (エタノールの代用) |
同上 |
|
アルデヒド |
条件 |
用途 | |
グルタルアルデヒド |
2~2.5%溶液を用いる |
汚染された医療器具 ※人には使用できない [芽胞を含む全ての微生物] | |
フェノール類 |
条件 |
用途 | |
石炭酸 |
2~3%溶液を用いる |
衣類、実験台、排泄物 ※手指の消毒には使用せず (芽胞、ウイルスに無効) 排出規制により多用されず | |
クレゾール |
0.5~1.5%でクレゾール石鹸液としてもちいる |
手指 ※衣類には不適 排出規制により多用されず | |
イルガサン |
0.3%液状石鹸液:手指消毒 0.5%アルコール溶液:器具の消毒 |
左参照 [一般細菌、一部の真菌に対して有効] 皮膚刺激性、毒性少ない | |
界面活性剤 |
条件 |
用途 | |
逆性石鹸 (塩化ベンザルコニウム 塩化ベンゼトニウム) |
0.1~1.0%水溶液及び0.2w/v%を含む83%エタノール溶液として用いる |
手指、器具 ※汚物には不適 (結核菌、芽胞に無効ただし 83%エタノール溶液は結核菌に効く) | |
クロルヘキシジン |
条件 |
用途 | |
グルコン酸クロルヘキシジン |
0.05~0.5%水溶液 |
手指、眼結膜、器具 ※粘膜には使えない (結核菌、芽胞、ウイルスには無効) | |
ハロゲン化物 |
条件 |
用途 | |
次亜塩素酸ナトリウム |
0.1~1.0%溶液 |
[芽胞、糸状菌、ウイルスにも有効] (結核菌に無効) | |
ヨードチンキ |
ヨウ素6%、ヨウ化カリウム4%を含む70%エタノール溶液 |
2倍希釈して皮膚消毒 | |
ポビドンヨード |
ポリビニールピロリドンとヨウ素の錯化合物でゆっくりヨウ素が遊離し作用する |
手指、皮膚、粘膜 | |
過酢酸 |
条件 |
用途 | |
過酢酸 |
6%溶液を使用 |
医療器具、機器、装置の滅菌、消毒 [芽胞にも有効] | |
重金属化合物 |
条件 |
用途 | |
ショウスイ、マーキュロクロム、チメロサール |
公害の問題からほとんどもちいられない |
4.
菌の熱感受性試験での観察結果を記しなさい
ノートの結果を貼るスペース
各試験管を比較すると
2と3の比較:2の方が比較的大きくて多くの菌苔が見られたが、こうした菌苔は3では見られなかったのでこの菌は94℃10分加熱に耐えられなかったものと考えられる。
3と4の比較:両方とも微小な菌苔が見られたがその量は3の方が多かった。減った菌苔は94℃10分加熱には耐えられたが94℃30分加熱(煮沸法)には絶えられなかった菌である。
5:121℃では藁にいた微生物は全て死滅したものと考えられる。
5.
菌の増殖認められた試験管はどれか
・試験管.2:藁あり、加熱なし
・試験管.3:藁あり、94℃10分加熱
・試験管.4:藁あり、94℃30分加熱
以上3つの試験管で菌の増殖が認められた
6.
試験管1の結果からどのようなことがわかるか
試験管1で菌の増殖が見られたら、滅菌不良の可能性があるため実験の意義が無くなる。試験管1はそのためのコントロールである。今回菌の増殖はみられなかったため、実験結果は藁からの菌によるものと断定される。
7. 試験管2の結果からどのようなことがわかるか
試験管2で菌の増殖がみられなかったら、培地不良(pH、塩濃度)、藁に菌がついていなかった、条件が適切ではなかった可能性があるので実験の意義が無くなる。
試験管2はそのためのコントロール。今回菌の増殖がみられたため、菌の培養に適した環境で実験が行えたことが断定される。
1. 今回調整した培地について説明しなさい
今回使用した培地は
肉エキス 1.8g・・・発育素(ビタミン、核酸成分)+栄養素(窒素原、炭素原など)
ペプトン 3.5g・・・栄養素(窒素原)+少量の発育素
NaCl 0.5g・・環境(浸透圧)
カンテン 5.0g・・・培地を固めるために用いる
精製水 350ml
pH 7.4(滅菌後のpHは7.2にしたい)・・・環境
以上の成分を含む普通培地、一般増殖用培地である。
※1MのNaOHでpHを調節した場合、滅菌後pHは0.2酸性側に傾く。もしNa2CO3をpH調節に用いた場合、滅菌後pHは0.2アルカリ性に傾くのでpHは7.0にあわせる。
2. 今回調整した培地の滅菌法について記しなさい
湿熱法の高圧蒸気滅菌法を用いて培地の滅菌を行った。
オートクレーブで2気圧121℃15~20分加熱し滅菌する方法である。培地などの芽胞やウイルスも殺滅できるのが特徴である。
3. 純培養には斜面培地を用いたのはなぜか
純培養に用いる培地の表面積は広い方が、菌が多く培養されるので実験を進めていく上で有利である。また純培養した菌を実験で使用するのだから、長く保存する場合雑菌が入らないことが望まれる。そのため表面積が広く、こまめに雑菌の混入を防げる(試験管の口、綿栓を焼くことによる滅菌、雑菌の入り口となる試験管の口自体が小さい)という観点から純培養には斜面培地がつかわれた。
4. 分離培養した2種の菌の観察結果を記しなさい
5. 純培養した2種の菌の観察結果を記しなさい
1. グラム染色の観察結果を記しなさい
2. 観察結果より、グラム陰陽の判定を行い、その判定根拠を述べなさい
球菌が紫に染まった、つまり球菌はグラム陽性菌である。
(球菌はブドウ球菌のみであるので、ブドウ球菌はグラム陰性菌である。)
桿菌が赤く染まった、つまり桿菌はグラム陰性菌である。
(桿菌は大腸菌のみであるので、大腸菌はグラム陰性菌である。)
3. 油浸して検鏡したのはなぜか
光源からの光線がスライドガラスから対物レンズへ向かう間に、ガラスと空気の屈折率の違いにより一部の光線が対物レンズの外へ屈折する(∵ガラスと空気の屈折率は違う)。
検鏡は1500倍という高倍率で行うため、屈折の影響が大きく反映され像は暗くて見えなくなってしまう。それを防ぐため油浸(ガラスと屈折率の同じoilをスライドガラスに点油して、対物レンズを浸す)という操作が必要となる。
4. グラム染色が細菌の鑑別上重要なのはなぜか
グラム染色によって細菌の細胞壁の状態(G+はペプチドグリカンを多く含む、G−はペプチドグリカンが少ない など)がわかる、つまりグラム染色によってβ‐ラクタム系などの抗生物質の効き方が判明する。
5. 芽胞染色の観察結果を記しなさい
6. 芽胞染色の結果から、菌の熱感受性試験についてどのようなことがわかったのか
煮沸法(100℃30分加熱)は完全な滅菌法ではなく、芽胞形成菌は生き残る可能性があることが判明した。
1. コアグラーゼ試験陰陽の判定をしなさい。また、理由を述べなさい。
血清がゼリー状に固まっていたので反応陽性である。
2. コアグラーゼ試験により黄色ブドウ球菌の鑑別ができるのはなぜか。
食中毒の原因菌として見つかった菌でコアグラーゼ陽性をしめすのは、黄色ブドウ球菌のみであり、黄色ブドウ球菌以外にはコアグラーゼを産生する菌種は通常の検査において遭遇しないのでコアグラーゼ試験により黄色ブドウ球菌の鑑別ができる。
1. 本実験の操作法を操作順に列挙し、その目的を記しなさい
@ コロニーから釣菌し、TE緩衝液に懸濁する
目的:TE緩衝液がDNAの溶解を助ける
A 沸騰水浴中で5分間加熱
目的:細胞の破壊 DNAの抽出
B 15,000rpmで3分間遠心分離し、遠心上精を採取しPCR反応試薬と混ぜ合わせる。
目的:細胞成分からのDNAの分離
C PCR反応(約100分)
目的:特定の塩基対をもつDNAの増幅
D PCRを行った試薬にLB試薬を加える
目的:DNAには色が無いため電気泳動の終わりを見極めるために色素を入れる。
また、LB試薬に含まれるグリセロールによって試料に重さを持たせてウエルへのアプライを適当におこなうことができる。
E アガロースゲル(EtBr染色液含有)にアプライし電気泳動をかける。電気泳動後、紫外線を照射して増幅したDNAバンドを検出しDNA分子量マーカーの移動度と比較して分子量を求める。
目的:DNAの分子量による分離
2. 電気泳動の結果を記しなさい
3. 2の結果からコントロールとして用いたエンテロトキシンA産生株(FRI722)、及び各自が培養した黄色ブドウ球菌において増幅された遺伝子の分子量(b.p.)をもとめよ
プラスコントロールのエンテロトキシンA遺伝子と、培養した黄色ブドウ球菌由来の遺伝子は、DNA分子量マーカーよりほぼ500b.p.である。
4.純培養した黄色ブドウ球菌がエンテロトキシンA産生菌か否か判定し、その判定理由を述べなさい
3.より培養した黄色ブドウ球菌はエンテロトキシンA産生菌である可能性が非常に高いが、エンテロトキシンA遺伝子が何らかの要因により転写されていない、つまりたんぱく質としてエンテロトキシンAそのものが産生されていない可能性があるため断定はできない。
腸内細菌の分離及び生化学的試験
1. 大腸菌、未知検体の確認培養の観察結果を記しなさい
|
|
大腸菌 |
未知検体 |
TSI |
色(斜面/高層) |
黄色/黄色 |
黄色/黄色 |
硫化水素 |
穿刺部白色 |
穿刺部から中心に黒色が広がる | |
ガス |
なし |
なし | |
SIM |
インドール |
反応陽性(赤色) |
反応陽性(赤色) |
運動性 |
穿刺部のみ菌は繁殖 |
穿刺部のみ菌は繁殖 | |
IPA |
穿刺部白色 |
上層部褐色 | |
硫化水素 |
穿刺部白色 |
穿刺部黒色 | |
リジン |
色 |
黄色 |
黄色 |
VP |
VP |
変化なし |
反応陽性(桃赤色) |
MR |
反応陽性(赤色) |
反応陽性(赤色) | |
シモンズのクエン酸塩 |
色 |
緑(変化なし) |
緑(変化なし) |
マロン酸塩 |
色 |
暗褐色(変化なし) |
暗褐色(変化なし) |
2. 1の結果から各確認培養、試験の陰陽を判定しなさい
|
|
大腸菌 |
未知検体 |
TSI |
色(斜面/高層) |
黄色/黄色 |
黄色/黄色 |
硫化水素 |
− |
− | |
ガス |
− |
+ | |
SIM |
インドール |
+ |
+ |
運動性 |
− |
− | |
IPA |
− |
+ | |
硫化水素 |
− |
+ | |
リジン |
色 |
− |
− |
VP |
VP |
− |
+ |
MR |
+ |
+ | |
シモンズのクエン酸塩 |
色 |
− |
− |
マロン酸塩 |
色 |
− |
− |
3. 腸内細菌の主要鑑別性状に基づいて、大腸菌であるか否か、また、未知検体が何であるか判定しその判定根拠を述べなさい
腸内細菌の主要鑑別性状から判断して、
大腸菌と考えられた菌は、運動性、ガス産生がみられず、リジン脱炭酸培地が反応陰性を示したのを除けば鑑別性状と適合するため、この菌は大腸菌であると判断される。また、未知検体は硫化水素、運動性、シモンズのクエン酸塩が反応陰性を示したのを除けば鑑別性状と適合し、かつ他の菌では全て反応陰性のSIMのIPAが反応陽性であったのでこの菌はProteus vulgaris変形菌であると判断される。
1. 生理食塩水と菌液を混和したとき凝集が見られたか。またこの凝集をなんというか
生理食塩水と菌液を混和したとき凝集はみられなかった。凝集は特に凝集塊とよばれる。
2. 生菌、加熱菌と血清を混和したときそれぞれ凝集塊がみられたか
生菌、加熱菌と血清を混和したときそれぞれ凝集塊がみられた。
3. 生菌だけではなく加熱菌においても凝集反応を行うのはなぜか
血清の凝集はO抗原によるものであることを特定するためである。抗原性を示す鞭毛によるH抗原、莢膜によるK抗原は熱に弱いが、LPSのO多糖は熱に強いため抗原性を失わない。
4. 1,2の結果からこの大腸菌の血清型を判定しなさい
O6血清では、生菌・加熱菌に凝集塊が見られたのでこの大腸菌の血清型はO6血清群であると判定できる。